大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

大阪高等裁判所 昭和39年(ネ)699号 判決

理由

《証拠》によれば、控訴人は昭和三二年三月一九日被控訴人の訴外亡天野周次に対する手形債務三九万二〇〇円を引受け、同日被控訴人との間に右債務の内金二九万円を目的として弁済期昭和三二年六月一六日利息日歩四銭と定めて準消費貸借契約を締結した事実を認めることができ、右認定に反する証拠はない。次に《証拠》によれば、被控訴人は昭和三二年五月一三日控訴人に対して二〇万円を弁済期昭和三二年五月二五日利息日歩四銭の約定で貸付けた事実を認めることができ、右認定に反する証拠はない。

そこで控訴人の時効の抗弁について判断する。《証拠》ならびに弁論の全趣旨によれば、被訴人組合は中小企業等協同組合法にもとづいて設定せられた信用協同組合であり、亡天野周次および控訴人はその組合員であつて、本件債務は被控訴人組合がその組合員たる右控訴人らに対して、組合の事業としてなした貸付行為による金銭消費貸借上の債務であることが認められる。そして中小企業等協同組合法にもとづいて設定せられた信用協同組合は、「相互扶助の精神に基き協同して事業を行う」ことにより、組合員の「公正な経済活動の機会を確保し、もつてその自主的な経済活動を促進し、且つ、その経済的地位の向上を図ることを目的とする」(同法一条)ものであつて、右目的達成のために行う事業は法定され(同条九条の八)、ひろく営利を目的として他の事業を行うことはできないのであるから、公益法人でも営利法人でもなく、その意味で中間的な法人というべきである。従つて、右の如き性質を有する被控訴組合がその組合員との間でなした本件資金の貸付その他の金銭取引行為はこれをもつて商行為と目すべきではないから、本件債権については、商行為によつて生じた債権の消滅時効に関する商法第五二二条の適用がなく一般の民事債権として一〇年の消滅時効にかかるものと解するのが相当である。よつて、控訴人の時効の抗弁は爾余の点について判断するまでもなく失当たるを免がれない。

それによると、右二九万円の準消費貸借債務については、昭和三四年三月二六日までに一九万円と同日までの利息および損害金の弁済があり、右二〇万円の借用金債務については、昭和三四年三月二四日までの利息および損害金のみの弁済があつたとして、右各残元金合計三〇万円と内金一〇万円については昭和三四年三月二七日から、内金二〇万円については昭和三四年三月二五日から右各完済に至るまで約定利率日歩四銭の割合による利息相当損害金の支払を求める被控人の本訴請求は理由があり、これを認容した原判決は相当で本件控訴は理由がない。よつて、本件控訴を棄却

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例